航空性中耳炎

その対策と治療法

新型コロナウイルスの感染症が5類に移行し、海外旅行を含めた航空機の利用者が増加しています。その結果、「飛行機に乗った際に耳が痛くなった」と耳鼻咽喉科を受診する患者や、事前に対策を求める患者が増えてきました。特に、飛行機での離着陸時に耳の痛みを経験した方にとっては、次のフライトで同じ問題が発生するのではないかと不安になるものです。これがいわゆる「航空性中耳炎」と呼ばれる状態です。

航空性中耳炎の原因

航空性中耳炎は、飛行機の高度変化による気圧の変化が原因です。特に、着陸時に気圧が急激に上昇すると、大気圧が鼓膜を押し、耳の痛みが引き起こされます。これは、特に耳抜きがうまくできない方に起こりやすく、さらに風邪や鼻づまりがある場合にはそのリスクが高まります。鼻と耳をつなぐ耳管が十分に機能せず、気圧の調整がスムーズに行えないことが、痛みの原因となります。

航空性中耳炎の対策

航空性中耳炎を防ぐためには、いくつかの対策が効果的です。

耳栓

まず、専用の「飛行機用耳栓」を使用することが推奨されます。これは、通常の音を遮断する耳栓とは異なり、気圧の変化を緩やかに調整するためのもので、特に着陸前に装着することが重要です。耳抜きが得意な方は、気圧の変化に対して耳の調整ができ、痛みを回避できますが、そうでない方はこの対策を取ることで航空性中耳炎の発症リスクを軽減できます。

点鼻薬

次に、鼻づまりがある場合は、耳鼻咽喉科で処方される鼻づまり用の点鼻薬を機内に持ち込み、着陸直前に使用することが効果的です。鼻の通りを良くすることで耳抜きをしやすくし、耳の負担を軽減します。これにより、耳が詰まる感覚や痛みを防ぐことが期待できます。

ただし、これらの対策を行っても、すべての航空性中耳炎を完全に防げるわけではありません。痛みを感じた場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することが大切です。

航空性中耳炎の治療法

航空性中耳炎は、いわゆる急性中耳炎の一種であり、鼓膜に発赤や内出血が見られることがあります。この場合、治療をせずとも数日から1週間で自然に治癒することが多いです。しかし、数日経っても耳の詰まり感(耳閉感)が続く場合、病態が滲出性中耳炎に移行している可能性があります。この状態では、鼓膜の奥に液体が溜まってしまい、耳の中の気圧が調整できなくなります。

滲出性中耳炎が疑われる場合、耳鼻咽喉科での診察を受けることが重要です。治療としては、まず「耳管カテーテル通気」という処置が行われます。これは、鼻内をスプレーして清掃した後、カテーテルを鼻の奥にある耳管の開口部に差し込み、空気を送り込んで鼓膜を膨らませる方法です。うまく送気できれば、耳の詰まりや痛みは直後に軽減されます。通常、この治療を繰り返すことで症状が改善し、徐々に回復しますが、鼻づまりや風邪の症状が残っている場合には、治療に時間がかかることもあります。

まとめ

航空性中耳炎は、飛行機でのフライト中に起こる耳の痛みを引き起こす疾患ですが、正しい対策を講じることで多くの場合、予防や軽減が可能です。飛行機用の耳栓や点鼻薬の使用が効果的ですが、症状が続く場合は耳鼻咽喉科を早めに受診し、適切な治療を受けることが大切です。航空機に乗る際には、事前の準備と対策を心がけ、快適なフライトを楽しんでください。