妊娠中における鼻のトラブル
急性副鼻腔炎など
妊娠中は体の免疫力が低下しやすく、風邪や鼻づまりが悪化することがあります。
特に、すでに上のお子さんがいる場合は、このお子さんから鼻風邪をもらって副鼻腔の感染を繰り返す方が多いです。
急性副鼻腔炎とは?
急性副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔と呼ばれる空洞に短期間で感染や炎症が広がる病気です。典型的な症状としては、鼻水、鼻づまり、顔面の圧迫感や痛み、さらには頭痛や嗅覚の低下が挙げられます。症状が進行すると、日常生活に大きな支障をきたし、放置すれば慢性化することもあります。特に妊娠中の方は、飲めるお薬に制限があるため、慎重なアプローチが求められます。
当院における妊娠中の副鼻腔炎治療について
診察の流れとファイバースコープによる観察
当院では、妊娠中の方が鼻水や鼻づまりの症状で来院された場合、まず前鼻鏡を使って鼻腔内を観察します。必要に応じて、鼻スプレーを噴霧し、吸引嘴管で鼻水を吸い取る処置を行います。さらに症状が重い場合は、鼻咽腔ファイバーを用いて、副鼻腔の内部まで観察を行い、より詳しい診断と治療を行います。
処置治療
妊娠中の副鼻腔炎治療では、まず鼻水(膿性鼻水)を吸引して取り除くことが最も重要です。鼻の内部に溜まった膿性の鼻水が感染の悪化を引き起こすため、これを取り除くことで症状の改善を目指します。耳鼻咽喉科診療では、まず局所スプレーを使用して鼻粘膜を収縮させ、空間を広げた後、吸引嘴管を用いて丁寧に鼻水を吸い取ります。この処置により、鼻の奥深くに溜まった鼻水も除去され、呼吸がしやすくなる効果が期待できます。
ネブライザーによる安全な治療法
次に行われるのが、ネブライザー吸入治療です。ネブライザーは、ジェットネブライザーによってミスト状にした薬液を鼻や副鼻腔内に吸入させる治療法で、妊娠中でも安全に使用できます。この治療では、抗生剤を含む薬液が直接患部に作用し、副鼻腔炎の症状を和らげる効果があります。
主治医の産婦人科医の意見を聞きながら治療は行いますが、ネブライザーのような局所吸入に含まれるお薬は胎児には影響は少ないとされ、妊娠中でも安心して治療を受けられます。
これらの処置により、患者さんはその場で呼吸がしやすくなり、症状の改善が期待できます。また、処置治療は急性鼻副鼻腔炎診療ガイドラインにおいても推奨されています。特に、鼻スプレーや鼻汁吸引、ネブライザーによる治療は、ガイドラインで推奨グレードC1(科学的根拠はないが行うよう勧められる)として位置づけられています。この治療法は、科学的根拠が明確ではないものの、多くの臨床現場で有効性が確認されており、妊娠中の患者さんにも適した処置として広く用いられています。
その他にも当院では、副鼻腔炎に効果のある漢方薬を処方することもあります。漢方薬は、妊婦さんにも比較的安心して使えることが特徴で、副作用が少ないため、薬の内服が難しい妊婦の方にも有効な治療法となります。漢方薬を使用することで、副鼻腔炎の根本的な症状を緩和させ、体に負担をかけずに回復を目指すことができます。
まとめ
妊娠中の副鼻腔炎治療は、薬の制限がある中で、吸引処置やネブライザーを活用した治療が中心となり、耳鼻咽喉科だからこそ受けることができるものとなります。
早期の対応と適切な処置を受けることで、症状の悪化を防ぎ、安心して妊娠期間を過ごすことが可能です。自己判断で薬を服用するのではなく、必ず専門の耳鼻咽喉科医に相談し、安全で効果的な治療を受けることが大切です。