中耳炎に対して耳鼻咽喉科医による鼻水吸い取りの重要性
この記事の概要
中耳炎は「耳の病気」ではなく「鼻の病気」から始まることが多い疾患です。
鼻水を放置すると炎症が耳に波及し、治療が長引いたり再発をくりかえしたりします。
耳鼻咽喉科医による鼻の奥までの丁寧な吸引処置は、薬に頼らずに中耳炎の悪化を防いだり改善を促す有効な方法です。

急性中耳炎とは?
中耳炎とは、鼓膜の奥にある「中耳」という空間に炎症が起きる病気です。
多くは鼻風邪をきっかけに発症します。
鼻と耳は「耳管」という細い管で内部的につながっており、鼻の奥(上咽頭)で炎症を起こしたウイルスや細菌が耳へと届くことで中耳炎が発生します。
特にお子さんはまだ身体が発達しておらず耳管が水平で短いため、鼻水の細菌やウイルスが耳に届きやすく、風邪を引いたあとに中耳炎を起こすことがよくあります。
小さなお子さんの中耳炎の特徴
生後6か月までは母親の免疫で守られていますが、生後6カ月~2歳頃のお子さんは自身の免疫がまだ十分に発達していないため、鼻風邪をきっかけに中耳炎をくりかえす傾向があります。
保育園に行っている場合や、子ども自身がそうでなくとも兄姉がいる家庭では、ほかのお子さんからウイルス・細菌をもらい、風邪・中耳炎をくりかえすことが多く見られます。抗生剤を内服して一度はよくなっても、数日後に再び発症するというケースも珍しくありません。
また、この時期のお子さんは自分で鼻をかむことができないため、鼻水が奥に溜まり、細菌の温床になってしまいます。
そのため、「原因となる鼻水や鼻の奥の炎症が残ったまま」になっていることが多く、根本的な改善には鼻の処置が欠かせません。
耳鼻咽喉科での中耳炎の処置治療
中耳炎の治療は、もちろん抗生剤も重要な治療の選択肢の一つですが、
抗生剤による内服治療がすべてではありません。
鼻の奥(上咽頭)にたまった粘り気のある鼻水を、耳鼻咽喉科医院にある専用の吸引機でしっかり吸い取ることで、抗生剤を使わずに軽快するケースも多くあります。
特に「抗生剤を飲んでもすぐ再発する」「鼻水が長引く」といったお子さんでは、数日間の連続した鼻吸い取り処置が有効です。
また、耳漏(耳からの膿)が出ている中耳炎の場合でも、抗生剤を使わずに温かい生理食塩水での耳洗浄+鼻吸い取りを続けることで、耳・鼻の炎症がともに改善する例があります。
耳と鼻の両方の細菌を除去して清潔に保つことが、中耳炎を治すカギになります。
滲出性中耳炎と鼻処置の重要性
また、急性期が治まった後にも「耳がつまった感じ」「聞こえが悪い(お子さんであれば、反応が悪い)」などが続く場合、滲出性中耳炎が疑われます。
この状態は細菌の感染は起きてはいませんが、中耳に液体が溜まり、慢性的に耳の聞こえが悪くなること、発達に影響を及ぼすことがあります。
これも原因はやはり「鼻・上咽頭の炎症」です。
アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎があると、鼻の奥に常に炎症が残り、耳管の働きが未熟な幼小児が滲出性中耳炎となるケースが多いです。
このため、滲出性中耳炎の改善にも鼻水の吸引・鼻炎治療が欠かせません。単に耳だけを治すのではなく、「鼻から治す」という考え方が非常に重要です。
鼻吸い処置を続けるメリット
・抗生剤を減らせる(薬に頼らない治療が可能)
・再発を防ぎやすくなる
・鼻詰まりが改善し、夜間の呼吸や睡眠が安定する
・滲出性中耳炎・副鼻腔炎の予防にもつながる
鼻吸いは“治療”であると同時に、“予防医療”でもあります。
特に冬季~春季にかけてはウイルス性鼻炎や花粉症が重なり、中耳炎のリスクが高くなるため、定期的な鼻吸い処置は非常に有効です。
ご家庭での電動鼻吸い器などを併用することも効果的ですが、鼻の奥の粘り気の強い鼻水は医療機関での処置が必要です。
ご家庭で気をつけたいこと
・鼻水が出始めたら早めに耳鼻科を受診する
・自宅では電動鼻吸い器などでサポートする
・熱や耳だれが出たときは無理に耳を触らず受診
風邪をひいたら、まず鼻の中をスッキリとをきれいにする。それが中耳炎を防ぐ第一歩です。
当院での治療
当院では「処置を徹底的に」をポリシーに、吸引器を使って鼻の奥(上咽頭)までしっかり吸い取る処置を行います。
カザマ式吸引カテーテル(ソフトタイプ)
当院では主にこちらを採用しています。
シリコン性の柔らかい素材で、奥までしっかり鼻水を吸引することが可能です。


アマツ式吸引管
新生児(生後2か月くらい)までにはこちらの吸引管を使用します。より細いですが、粘り気のある鼻汁には効果が薄いです。

細い金属嘴管
(画像下)通常は細い鼻腔に合わせたサイズを使用して鼻の処置に慣れた一般成人に使用しています。
(画像上)鼻腔が広く特に粘度の高い鼻汁の成人患者(副鼻腔気管支症候群、線毛機能障害症候群の患者さんなど)に使用しています。
