特発性三叉神経痛(片側の顔の痛み)とは?

特発性三叉神経痛は、主に顔の片側に強い痛みを引き起こす神経疾患です。多くの場合、頬や額、顎などに鋭い痛みが発作的に現れ、突然の電撃痛のように感じられることが特徴です。痛みは一瞬で消えるものの、何度も繰り返し発作が起こるため、日常生活に大きな影響を与えることがあります。

この疾患の原因は、顔の感覚を司る三叉神経が、血管や腫瘍によって圧迫されることで引き起こされると考えられています。三叉神経は、目、上顎、下顎の三つの枝に分かれ、顔の感覚を脳に伝える重要な役割を担っています。この神経が何らかの圧迫を受けることで、痛みの信号が過剰に送られ、痛みが突然発生するのです。特に中年以降の女性に多く見られる疾患ですが、男女を問わず誰にでも起こり得る病気です。

急性副鼻腔炎との違い

特発性三叉神経痛は、顔の痛みを主な症状としますが、急性副鼻腔炎のような鼻の疾患と区別することが重要です。急性副鼻腔炎では、鼻水や鼻づまり、後鼻漏などの症状が伴い、顔や額の痛みはしばしば「下を向いたときに悪化する」「歩くと響く」という特徴があります。これに対し、特発性三叉神経痛は、鼻の症状が全くなく、痛みの性質も異なります。特に、触覚が敏感になり、風が顔に当たるだけで痛みを感じたり、歯磨きをすると顔全体に痛みが広がるなど、痛みの原因となる刺激が非常に軽微なものであることが特徴です。痛み自体も短時間で収まるものの、何度も繰り返されるため、日常生活におけるストレスが非常に大きくなります。

耳鼻咽喉科では、レントゲン検査やファイバースコープを使って副鼻腔内の異常を確認し、副鼻腔炎ではないことを診断します。レントゲンで副鼻腔の影が確認できないことや、ファイバーによる観察で副鼻腔からの排膿が見られない場合、特発性三叉神経痛が疑われます。このように、顔の痛みがある場合でも、原因となる疾患をしっかり区別することが重要です。

特発性三叉神経痛の治療

特発性三叉神経痛の治療は、一般的な鎮痛剤では効果があまり期待できません。ロキソニンなどの通常の鎮痛薬で痛みが和らがない場合、特効薬として知られるテグレトール(カルバマゼピン)が処方されることが一般的です。テグレトールは、神経の興奮を抑制し、痛みの発作を予防する効果があるため、多くの患者さんにとって有効な治療法となります。しかし、この薬にはふらつきやめまいといった副作用が伴うことがあり、慎重に投与量を調整する必要があります。そのため、医師の適切な指導のもとで服用することが重要です。

薬物療法が効果を示さない場合や、副作用が強く出る患者さんに対しては、脳神経外科でのさらなる検査が必要になることがあります。MRI(磁気共鳴画像)検査などを行い、三叉神経が血管や腫瘍によって圧迫されているかを確認します。この圧迫が原因で痛みが生じている場合には、外科的な治療が検討されることもあります。外科的治療としては、血管と神経の圧迫を解放するための手術や、神経の機能を調整するための治療が行われることがあります。

まとめ

特発性三叉神経痛は、顔の片側に強烈な痛みを引き起こす疾患で、日常生活に大きな影響を与えます。急性副鼻腔炎と症状が似ていることもありますが、鼻水や鼻づまりといった典型的な鼻の症状が見られない場合、特発性三叉神経痛の可能性を考える必要があります。正確な診断のためには、耳鼻咽喉科での検査や脳神経外科での精密検査が重要です。また、薬物療法や外科的治療を適切に受けることで、痛みの軽減や発作の予防が可能です。顔の痛みを感じた際は、早期に専門医を受診し、適切な治療を受けることが大切です。