中高年の耳鳴りについて

40歳以上の男性の40%。女性の10%の方が耳鳴りを自覚しているというデータがあります。以前お話しした突発性難聴などに伴う耳鳴りは病院で治療を受けると治ることがありますが、加齢に伴う耳鳴りや病気で固定してしまった耳鳴りは病院でもなかなか治りません。人は年をとると色々と不具合が出てきます。難聴や耳鳴りも老化の一つと考えられます。それでは、どうしようもないのでしょうか?治療法は無いのでしょうか?

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診察・検査

耳鳴りがあり耳鼻咽喉科にかかられたことが無い方は、まず耳鼻咽喉科専門医に相談してください。診察を受けますと最初に耳の中の状態をみます。耳垢が詰まっていて、これが耳鳴りの原因である方もみえます。前回お話しした滲出性中耳炎が耳鳴りの原因の方もみえます。これらの耳鳴りは治ります。診察をして鼓膜、外耳道が正常の方は聴力検査をします。急に始まった耳鳴りの方は、以前お話しした突発性難聴の場合があります。

しかし、長期間続いている耳鳴りの方は、加齢性難聴や病気としては固定してしまった難聴の方がほとんどです。このような耳鳴りを慢性的な耳鳴りと言います。

慢性的な耳鳴りの治療

残念ながら、慢性的な耳鳴りを専門として積極的に取り組んでいる耳鼻咽喉科開業医は多くはありません。なぜなら、決め手となる治療法が確立していないからです。

しかし、治療法が全くないわけではありません。私は、個々の患者さんの耳鳴りの大きさや日常生活の苦痛度や耳鳴りに対する受け止め方(メンタル的状態)により、治療法を選択して進めていきます。たとえば、日常の生活音がある中でも聞こえるような大きな慢性的な耳鳴りに悩んで見える方には、耳鳴りを緩和する点滴を行ったりします。この治療は完治する方法ではありませんし、すべての方に効果があるわけではありませんが、耳鳴りが一時的に軽減される方があります。他には、漢方治療もおこないます。万人に効くひとつの漢方薬はありません。漢方は、個々の人にそれぞれ合わせて処方するものです。1~2週間飲んで効果が無ければ変更します。合うものが見つかると驚くほど楽になったという患者さんもみえます。

それでも、色々治療したが効果が無い人がみえます。最近、慢性的な耳鳴りのメカニズムが解明され、内耳が原因の難聴になると難聴になった周波数の音が脳に届かないことに脳のある部位が反応して耳鳴りを発現するということがわかってきました。そこで、補聴器のような器具をつかってその周波数の音を耳に入れることによって、脳に耳鳴りを発現させないようにする方法が提唱されるようになってきました。軽度難聴の慢性的な耳鳴りの方は、静かなところでは音楽などを聞くことによって耳鳴りを発現しなくする方法も一つの治療法ということになります。

 

慢性的な耳鳴りで悩み苦しんでみえる方は、一度耳鼻咽喉科専門医にご相談ください。