耳管通気処置と滲出性中耳炎(痛くない中耳炎)
中耳炎→「耳が痛い」ですが、中高年の中耳炎は「痛くない」中耳炎が多いようです。症状は「聞こえが悪い」「聞こえがおかしい」などです。鼻風邪をひいた後から症状が始まり、風邪が治っても耳の症状がよくならないということで受診されます。高齢者の方ですと、「風邪をひいてから急に耳が遠くなった」と、付き添いの方がお連れになります。
滲出性中耳炎の病態
病気の原因は、鼻と耳をつなぐ管(耳管という)の働きの低下です。幼小児期もこの働きは未熟で中耳炎になりやすいですが、成長とともに成熟し中耳炎になりにくくなります。
一方、中高年はこの働きが低下してきます。鼓膜の内側を中耳といいますが、中耳の気圧と外気圧を一定に保つ働きを耳管が行っています。外気圧が変わっても鼓膜の位置が一定に保たれれば、音の振動が鼓膜を正しく伝わり、正しく聞こえます。鼓膜の位置が変わると音の聞こえ方も変わります。高い山に登った時の感じです。耳管の働きが低下し、いわゆる「耳抜き」がうまくできなくなると、中耳は陰圧になります。
この状態が長く続くと、滲出液という体液が滲み出してきて中耳に溜まります。医師はこれを「耳に水が溜まっている」という言葉を使って説明します。決して、シャワーなどで外から耳に水が入ったという意味ではありません。
滲出性中耳炎の診断と治療
耳鼻咽喉科専門医が丁寧に耳を診察すれば、鼓膜を観察しただけで診断はつきます。まれに、耳の穴の形状、サイズなどで鼓膜が観察しづらく診断に苦慮する場合がありますが、顕微鏡を備えている耳鼻咽喉科なら、診断は可能です。診断がつけば、まず原因となる鼻かぜ(鼻炎、副鼻腔炎)などがあれば、これを治療します。
鼻かぜ(鼻炎、副鼻腔炎)の治療後、症状が改善しない場合は、状態に応じて以下のような治療を行います。
耳管カテーテル通気治療
医師が細長い金属製の管を鼻の穴の奥に入れて、耳管開口部という穴に差し込み、中耳に空気を送り込む治療法です。治療直後に聞こえの改善を感じます。
鼓膜穿刺・鼓膜切開
耳管カテーテル通気を繰り返し通院しても完治しない時は、鼓膜穿刺・鼓膜切開を行います。鼓膜切開時には、鼓膜の表面を麻酔しますので痛みは全く感じません。穿刺・切開直後に耳の症状は取れて、正しく聞こえる耳になります。鼓膜は切開しても1~2週間で元のようにふさがります。
鼓膜換気チューブ
鼓膜穿刺・切開をしても、再び中耳に水が溜まる方がいらっしゃいます。耳管機能不全になっていると考えられます。このような方には、鼓膜を切開する時に、鼓膜換気チューブという鼓膜の穴がわざとふさがらないようにするシリコン製の1mmの穴の開いたチューブを鼓膜の表面に留置します。中耳に水が溜まっているより、鼓膜に小さな1mmの穴が開いていた方がよく聞こえるという理論です。
風邪をひいた後、急に耳の聞こえが悪くなった時は、耳鼻咽喉科専門医に一度受診してみてください。